租税法ノート①「租税について」

川崎市中原区元住吉オズ通り商店街の税理士、トノヤマです。

租税法について改めて勉強し直している(そもそもの記憶が怪しい)ため、定期的にまとめていこうと思い、どうせならブログで公開しようと思った次第です。

大学院を目指そうという方にも少し役立つかもしれません。

初回のテーマは「租税について」です。

Contents

租税とは

そもそも「租税」とは何でしょうか。

日本国憲法において、租税の明確な定義はありません。(ドイツ租税基本法にはあります)

ただし、国民健康保険料が法律に規定されていないことから、保険料が「租税」に該当するか争点となった「旭川市国民健康保険料事件」では最高裁が次のように判断しました。

[voice icon=”https://tono-tax.com/wp-content/uploads/2018/05/722285.jpg” name=”最高裁” type=”l big”]市町村が行う国民健康保険の保険料は、「租税」とは異なり、「被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである[/voice]

ということで、給付を受け取ることに対する反対給付という性質を有するものは「租税」ではないとされました。

逆を言うと、サービスを受け取ることに対する反対給付という性質を有しないものが「租税」であるということになります。

租税法の権威である金子宏教授は、租税について、

[voice icon=”https://tono-tax.com/wp-content/uploads/2018/05/1016340.jpg” name=”金子宏教授” type=”l big”]租税は、国家が特別の給付に対する反対給付としてではなく、公共サービスを提供するための資金を調達する目的で、法律の定めについて私人に課する金銭給付である。ただし、租税を実質的に定義することは、租税法の解釈・適用上、ほとんど実益をもたない。[/voice]

とおっしゃっています。

租税の性質

租税の機能・性質は以下の3つがあるとされています。

公共性

租税は、公共サービスに必要な資金調達を目的としているということです。

権力性

租税は、国民の富の一部を国家に移すことになることから、国民の財産権の侵害の性質を持たざるを得ず、このことから権力性があるとされています。

非対価性

ここでは、公共サービスが直接的に特定の納税と結びついているわけではないという意味での非対価性をいっています。

租税の機能

租税にはさまざまな機能があります。

公共サービスの提供資金の調達機能

公共サービスには当然ながら莫大な資金が必要となりますから、その資金調達手段ということです。

所得再分配機能

生存権についても憲法では保障されていることから、そのためには各種の社会的政策が必要であるため、所得の再分配も不可欠であるということです。

ビルトインスタビライザー機能

租税が自動的に景気調整の機能を持っているという考え方です。

その他

環境対策、少子高齢化対策など。

租税の原則

以下の3つが我が国の税制の構築の基礎的な原則となっています。

公平性

当然公平でなければいけませんが、これには2つの種類があります。

水平的公平

例:消費税は一律8%である

垂直的公平

例:所得税は累進課税制度により高い所得の人ほど高い税率を課される

中立性

租税が課されることで、社会的経済的な歪みを生じないようにすべきという原則をいいます。

例:マーガリンとバターは代替的な関係にあるため、一方にのみ課税すると税制が消費選好に影響を及ぼす

簡素性

課税コストを削減するためできるだけ租税制度は簡素化すべきとの考え方です。

日本の税制はもはやそうとは思えないくらい複雑ですけどね・・・。

租税についての判例

旭川市国民健康保険料事件

ガーンジー島事件

今日の名言

「(多すぎるタンス預金を危惧して)90歳が65歳に遺産相続してどうする?」

(麻生太郎)

 

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