川崎市中原区元住吉オズ通り商店街の税理士、トノヤマです。
年末に国税庁が異例の発表をしました。
適正なものとして受理していた住宅ローン控除などを適用した確定申告書約14,500件に誤りがあったということです。
事業をしている方でも多く該当する今回の事例。
それらの内容について解説したいと思います。
Contents
住宅ローン控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例を併用した場合
両親や祖父母から住宅取得資金として贈与してもらって住宅を購入されてる方は多いと思います。
特例として平成31年ですと最高1,200万円まで(省エネ住宅に該当する場合)の贈与が特例で免除となります。
この特例を使って贈与をしてもらうまではいいのですが、住宅ローンを組んで住宅を購入した場合の要件が注意なのです。
贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例とは
各制度の詳細は省略しますが、以下の2つの制度が該当します。
①直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
(租税特別措置法(以下「措法」といいます。)第70条の2)
②特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
(措法第70条の3)
誤っていた点
住宅ローン控除の要件として、ローン残高の1%を税額控除できると思っている方が多いのですが、実はこの要件は厳密には次のいずれか低い金額の1%が税額控除されるのです。
①年末のローン残高(適用年により異なる)
②贈与の特例を受けた場合は、贈与された金額を建物の取得価額から控除した額
住宅を購入する際、家具や登記費用などの諸費用も合わせてローンを組む場合があります。
そうすると、②の方が低くなったりするんですね。
図で表すと下のような状態です。(物件価格4,000万円)
この場合、3,500万円ではなくて、2,800万円で申告しないといけないことになります。
これを3,500万円で申告していたということです。
住宅ローン控除と居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例を重複適用した場合
この規定はそもそも知らない方も多いのではないでしょうか。
不動産価格が高騰している昨今では10年前に買ったマンションなども利益が出たりしています。
今住んでいる住宅を売って、その売ったお金で新しい物件を買えればいいですが、改めて住宅ローンを組んだりすることもあるかと思います。
居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例とは
各制度の詳細は省略しますが、次に掲げるものが該当します。
①居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
(措法第31条の3第1項)
②居住用財産の譲渡所得の特別控除
(措法第35条第1項(同条第3項の規定により適用する場合を除きます。))
③特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
(措法第36条の2、措法第36条の5)
④既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
(措法第37条の5)
⑤認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合の譲渡所得の課税の特例
(旧措法第37条の9の2)
誤っていた点
新築や購入等した住宅を居住の用に供した年分及びその前後2年分ずつの計5年分の間に、
居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合には、
その住宅について住宅ローン控除の適用を受けることができません。
それにもかかわらず、適用を受けていたということです。
平成30年に住宅を購入した場合ですと、
平成28年から平成32年の間に居住用財産を譲渡した場合などの特例を受けた場合が該当します。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用における所得要件の確認もれ
誤っていた点
住宅ローン控除の所得要件は3,000万円以下ですが、
これはなかなかいらっしゃいません。
実は住宅取得資金の贈与の特例にも所得要件があり、
これは2,000万円以下なんです。
所得が2,000万円超の方もなかなかいらっしゃらないんですが、
3,000万円と比較するとやはり多くなります。
この所得2,000万円以下の要件を思いっきりすっ飛ばして適用を受けていたというものです。
税理士的にもおそろしいです
会計検査院の指摘で発覚したそうですが、これには本当に驚いたと同時に、
日本中の税理士もスルーしていた可能性が高いです。
古典的ですが、提出前に本当に適用になるのか要件をもう一度確認する。
思い込みで大丈夫だと決めつけない。
きちんとヒアリングを行う。
今回の指摘に対して、自分がこれまでに携わった案件はなさそうですが、
確定申告と贈与税の申告は時期も重なり多くの案件を処理しなければいけないので、
いつもより余計に気をつけないといけないなと身の引き締まる思いです。